岡山県地域文化財建造物専門家(ヘリテージマネージャー)養成講習会:第4回:茅葺屋根の技法工法@後楽園

※今後の参考にするため、当事務所設立前に参加した「ヘリテージマネージャー」の講習会についての記事を転載します。

 

8/31、台風の接近で大雨の予報でしたが、当日は天気も持ち直しました。

ただ、暑かった…。

無事に今回も講習会が開催されました。

 

今回は午前中、岡山後楽園にて実際の茅葺の建物を見ながら、維持管理している職人さんの話を「生」で聞くことができる、貴重な会です。

法律の関係で茅葺はほとんど実践することができませんが、使用可能な地域では今も維持管理されています。

 

 

さて、出発。Exif_JPEG_PICTURE

 

まずは入口付近にある延養亭。

屋根形状は入母屋。棟は杉皮覆い。棟飾り等は耐久性を考慮して銅板を細工したものを使っています。

このような銅板を細工する職人さんが少なくなっているそうです。

修理は全部取り替えてしまう「葺き替え」ではなく、痛んだ箇所を取り換える「差し葺き工法」が採用されています。

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続いて、「栄唱の間」。

南面をH23年に修理されています。

入母屋の屋根ですが、特徴は棟の「雁振り瓦(がんぶりがわら)」。

一枚の瓦で棟を抑えています。

茅葺の特徴から棟の部分のおさめかたは地域の特徴を一番強く示すところです。

この「雁振り瓦」を使用する地域は岡山県南と香川北部に見られる形式です。

但し、この瓦は屋根形状などに合わせた特注品になり、一枚¥50,000-は下らない相場だそうです…。

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雁振り瓦です。

 

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「茂松庵」

建物名称の通り、松が多くあるところにぽつんとあります。

これも雁振り瓦で棟をおさめています。

但し、方形ではなく棟がつながっているため、その部分に補助的に金属板などを使っているそうです。

建物を利用していないこと(閉め切っていること)、日が当たらないこと、枯葉が多いことなどから屋根ふき材の痛みも早いようです。

 

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「廉池軒」

寄せ棟の棟は杉皮覆い。

戦災を免れた数少ない建物。

ただ、現在の屋根材の状況はあまりよくないようで、葺き替えの時期に来ているそうです。

 

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「茶祖堂(利休堂)」

昭和36年に再建されたもの。

H21年に屋根修理されています。

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茅葺の屋根に瓦屋根が突っ込んでいる形になっているため、この部分のおさめかたが大変難しいそうです。

 

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茅葺ではないですが、私がとても気に入っている建物の「流店(りゅうてん)」。

これも戦災を免れた建物です。

開放的な一階部分には川が流れています。

こんな人の心を動かす遊び心がある建物はなかなかないですね。

今回のような「くそ暑い」日にはここで休憩すると本当に気持ちがいいのですが、今回は茅葺屋根の講習、かつ時間も押していたためスルーしました。

歩きながら撮影したので、雑な写真です…。

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「唯心堂」

時間の都合上、詳しい説明はありませんでしたが、六角形の屋根で珍しいものです。

棟は焼き物の「鉢」が乗っかっています。

これも遊び心あるデザインで、面白いです。

ただ、技術的には屋根の角の数が多くなるため非常に難しく、特に棟の部分の作業が大変だそうです。

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「船小屋」

船を収納しておく小屋も茅葺でした。

この葺き方はあまり長持ちする仕様ではないそうです。

また葺き替え作業は冬の寒い時期に行うことが多く、池のなかということもあり、やりにくいそうです…。

 

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「福田茶屋」

時間の都合上、説明はありませんでしたが、H15年に修理を行っているそうです。

 

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「五十三次腰掛茶屋」

実際利用されている建物で、休憩することができます。

建物の様子も間近に見ることができました。

寄棟で棟は杉皮覆い。

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軒の様子です。

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建物内部の天井はこんな感じ。

化粧材があるので、茅を直接見ることはできません。

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軒の処理です。

化粧材が茅の下に敷かれています。

一部傷んで変色しています。

こういった部分をひっぱり出して切り取って、新しい茅を差し込み修理する方法が「差し葺き」です。

 

時間の都合でここまでになりましたが、全部で後楽園には14棟の茅葺の建物があります。

丁寧にその都度教えていただいて、本当に勉強になりました。

茅葺は「草」を葺く屋根の総称で、昔の農家では他にもイネや小麦の藁も使われていたそうです。

刈り取った藁を屋根に葺き、それが腐ったら肥料に利用する、という完全なリサイクルが成立していたそうです。

 

また若い職人さんも次第に増えているとのことで、こういう良さを伝えていくことの大切さが見直されてきていることを実感しました。

しかし、法律の関係(特に防火)から現状はなかなか茅葺にはできません。

良いものはしっかり残して活用する、という視点から、茅葺を選択肢のひとつとして積極的に活用できるような制度になってほしいと思いました。