岡山県地域文化財建造物専門家(ヘリテージマネージャー)養成講習会:補講1:文化財の修理・八角園舎見学

※今後の参考にするため、当事務所設立前に参加した「ヘリテージマネージャー」の講習会についての記事を転載します。

 

基本的には年間のカリキュラムすべてを欠席することなく受講することが条件の講習会ですが、何度か補講によりやむを得ず欠席した際の単位を補てんする措置があります。

私は現在全ての講習会に参加しておりますが、今回の補講(11/2)も参加させていただきました。

 

午前中は第一回の講師でお世話になった江面先生による文化財の修理に関する内容の講義です。

前回も大変興味深い話を聞かせていただきましたが、今回はその復習的な意味もあり、前回からさらに理解が深まったように思います。

特に、文化財に対する心構えとその制度の話、またそれを踏まえていかに「活用」をしていくかを教えていただきました。

先生の淡々とした話し方のなかにも、強い熱意と理想を追求する姿を拝見させていただきました。

是非機会がありましたらまたいろいろなお話を聞かせていただきたいと思っております。

 

そして、午後からは場所を変えて岡山市内にある旧旭東幼稚園園舎「八角園舎」の見学に行きました。

もともとは門田屋敷本町にあった園舎を解体保存し、平成10年に現在の岡山市立中央図書館に隣接する場所に移築復元した建物です。

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外観です。

八角形寄棟造の遊戯室の四方に切妻造の保育室や管理棟が接続している特徴的な形状です。

 

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外観の詳細を見ていきます。

切妻屋根の軒先の納まりはこの部材で処理しています。

妻側は屋根勾配に合わせた軒裏ですが、桁方向の軒裏は水平です。

このような軒裏の納まりは現在はこの部分を箱型にして処理するのが一般的ですが、この建物ではこの持ち送りのような部材ひとつで処理しています。

スッキリ見える形になりますが、合わせる作業が大変でしょうね…。

 

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八角形の遊戯室の屋根です。

銅板葺の小屋根が付いています。

この小屋組がまた複雑なのですが、その様子を実際見ることはできず、建物内の資料室で写真を見ることができます。

遊戯室部分と切妻屋根が取合う部分は、やはり雨仕舞が難しいことがよくわかります。

これを解消する方法として、遊戯室の高さを屋根が干渉しない高さまで高くする方法もあったと思いますが、その方法を取らずこの高さに抑えていることが全体の外観のバランスの良さを出していると思います。

 

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壁と屋根の取り合いの部分です。

水切りも木製です。

 

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建物の玄関です。

この建物は国指定重要文化財(建造物)ですが、このように一般に開放され、幼児を中心に活用(利用)されています。

文化財などは資料館として保存されることが多いですが、この建物のように活用しながら保存していることが素晴らしい点だと思います。

文化財が市民、国民にとってより身近な存在になり、その素晴らしさを体感することができます。

ヘリテージマネージャーの講習会でも単純に保存するだけではなく、それを活用してまちづくりや国民の創造的活動に貢献することが理想とされています。

(午前中の江面先生の講義がまさにこの活用方法の重要性についての内容でした。)

 

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建物の説明です。

 

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遊戯室内部です。

入った瞬間、「おぉぉーーーーー!!」と声が出ました。

広々としていて開放的で、八方から光が入り、特徴的な柱があります。

天井の竿が中心の柱に向かって集まる姿が、人が集まる場所としての象徴のように思えました。

管理棟から遊戯室を中心に園児の動きを把握することができるため、この平面形状になったとの説明ですが、入ってみてよくわかりました。

この建物を見て、今の「オープンスクール」に通じる空間だと感じました。

当時の園児たちがこの遊戯室でいろんな活動をしていた姿を想像できます。

 

県内にはこのような八角形の遊戯室を持つ園舎が記録に残るだけでも8か所あるそうですが、この建物はそれらのなかで最も古いもので、このような園舎の原点となる建築物と言われています。

後にできた同様の形態の建物では中心の柱の無いものもあります。

私はこの柱こそが空間を特徴づける必要不可欠な要素だと感じました(構造的な理由により柱があるのですが)。

この遊戯室の柱(八角形です)のもとにいると、大きな傘の下にいる感覚があります。もしくは大きな木の下でしょうか。

屋内にもかかわらず適度な自然光も入ってくる大きな木の下のような空間は、当時主流であった屋内保育の考え方のなかで、「屋内でありながら屋外を感じさせる場所」であったと思います。

なにより、この柱をくるくる回りながら遊ぶ子供の姿が容易に想像できます。

小さい子はこの柱をペタペタと叩いたりしたでしょうね。

いろんな「アクティビティ」がこの柱から生まれたのではないか?と想像しながら、この建物を後にしました。

 

文化財の活用方法、建物の構造・構法、そして空間の楽しさを勉強させていただいた講習会でした。