岡山県地域文化財建造物専門家(ヘリテージマネージャー)養成講習会:第11回(最終回):歴史的建造物修復余話+講習会締め括り

※今後の参考にするため、当事務所設立前に参加した「ヘリテージマネージャー」の講習会についての記事を転載します。

 

12/7、長かった講習会の最終回がオレンジホール研修室にて開催されました。

第1回目が7/20に開催され、その後隔週で計11回、他補講数回、長期間にわたり受講してきました。

幸い、どの講習会も天候に恵まれ、調査や見学会で雨天になることはありませんでした(台風の影響も不思議なことにその時だけほとんどなかったり…)。

 

今回は午前中、根木先生による「歴史的建造物修復余話」というタイトルで講義がありました。

先生の行われた調査手法に関する内容が中心で、使用されている木材から様々な情報を得る方法の概要を教えていただきました。

  • 「放射性炭素測定法」…生命活動終了時の年代が判明し、伐採年代が想定できる。
  • 「年輪年代測定法」…ヒノキ、杉、高野槙などに関して伐採年及びその近似値が判明する。

これらの方法について簡単に説明をしていただき、その実例を見せていただきました。

建造物等に納められている墨書とこれらの測定法による結果を比較してみると、かなりの制度で一致することもわかり、木材に対して理化学的分析を行う有用性がよくわかりました。

そして畳の下にある荒板からも、大鋸挽痕跡から当時の木挽き職人の作業が予測できること、つまり浮世絵などに描かれた「静止画」だけの情報ではなく、動きの痕跡として見ることにより大鋸挽き作業の動的な特性が判明することを教えていただきました。

これは、建築廃材からも十分な資料を得ることができる実例であり、調査を行うに当たり小さなことも見逃さないことが重要であることを示しています。

 

これらを踏まえて、先生は

歴史的建造物の修復にあたっては、建築史を始として考古・民俗・文献・美術史等の専門研究者の協力は不可欠で、加えて年輪年代学等の理化学的分析手法の導入が必要であり、学際的検証や分析手法の導入、修復資材確保やその技術的伝承にさえも考慮した地道な活動が肝要である。そして一律的な官制主導の保護・保存の手法からは手当てしきれない地域性や伝統性に着目した新たな修復スタイルの確立が望まれる。

とまとめてくださいました。

歴史的建造物の調査がいかに奥の深い分野であるか、よくわかる講習会でした。

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そして午後からは、今までの講習会を受けた参加者それぞれが、講習会を通じて感想と今後の抱負を述べる発表会となりました。

 

私の発表として、この講習会には

  • 歴史的建造物や街並みを専門的な視点でしっかりと評価する知識と技術を学ぶ講義(茅葺、家曳き、調査実測手法、木構造特性、理化学的年代測定法等)
  • 上記の専門的視点から、建造物単体だけでなく、さらに広い視野でまちづくりやコミュニティのデザイン・プロデュースを行う講義(たつの市、篠山、静岡、倉敷等の事例)

の二つの柱があり、ヘリテージマネージャーにはこのどちらかではなく両方の能力が求められ、それをもって「地域固有の風景を回復しつつ誇りの持てる地域づくりに貢献する(日本建築士会連合会:「歴史的建造物の保全活動に関わる専門家(ヘリテージマネージャー)育成・活用のためのガイドライン」より)」役割があることを教えていただいたと述べました。

 

そして、歴史的建造物や街並みを保存・活用するためには、所有者の維持管理に対するモチベーションの維持・向上が不可欠で、そのためには建築物や街並みに対する愛着形成について考える必要があることを発表しました。

建造物の物理的な保存・活用方法の提案や記録だけでなく、建造物を残し、活用し、まちとして発展していくための「きっかけ」をいかにして作っていくかを考える研究調査も必要だとこの講習会を通じて痛感しました。

 

今後は今までの講義の内容に関するレポートを提出し、認定委員会の認定を経て「岡山県地域文化財建造物専門家」として登録されることになります。

やっと講習会は終了しましたが、ヘリテージマネージャーとしての活動はこれから始まります。

第一期生の連絡網も整備される予定で、懇親会なども用意され、今後様々な連携を取りながら地域貢献へ向けて動き出すことになります。

いろいろな方々と知り合うこともでき、多くの専門的な知識を得ることができ、かつ今後の新しい地域貢献のあり方を学ばせていただいたすばらしい講習会でした。

今後も積極的にヘリテージマネージャーの活動に参加させていただき、微力ではありますが私のできることを活かして活動していきたいと思っています。