「環境」と「人の行動や心理」との関係性を探る
「環境心理学」という分野があります。
環境と人の心や行動との関係性(影響)を考える学際的領域ですが、建築だけでなく広場や町など外部空間でもそれらの考え方に触れることができます。
写真は岡山駅前の桃太郎像ですが、その周囲は待ち合わせによく使われます。
座っている人の位置関係にそこにいる人の心理状態を読み取ることができます。
また、外側に向かって隣の人と目線を合わさず座ることができるベンチのような台座が、待ち合わせしやすい環境を作り出しています。
人がその環境の中でどのような心理状態になるかを分析・予想することにより、環境のデザインや評価に応用することが可能となります。
大型商業施設の吹き抜け部分ですが、多くの人が行き交うこの場所においても、環境(机などのレイアウトや柱、手摺などの建築要素など)と人の行動との関係性が観察できます。
この「環境と人との関係性」をしっかり考察することにより、場所の有効活用や雰囲気の演出に応用することが可能になると考えています。
ほんの小さな「しかけ」から生まれる行動の可能性
広場にぽつんと設置されたこのコンクリートのかたまりから、何を想像できるでしょうか?
大人であれば腰を掛けることができますが、子どもには少し高すぎるようで自ら座ることは不可能でしょう。
小さな植木鉢を置くことは可能でしょうが、コンクリートですから直接木の棒を刺すことは不可能です。
このように一見意味のなさそうな単純な環境の要素であっても、そこからいろんな行動の可能性を知覚することが可能です。
小さな「しかけ」だけでもあらゆる行動が期待できます。
このような考え方を応用することにより、ユーザーに分かりやすい・楽しい・使いやすいという建築や外部空間などの計画に役立てることが可能になります。
まちの「雰囲気」を構成する要素は?
倉敷や尾道の商店街、路地、飲み屋街の写真を並べてみました。
写真からでもそれぞれの場所の雰囲気の違いが伝わってくると思います。
実際にその場所に行くと、写真ではわからないその場所の「楽しさ」や「落ち着き」のような感覚を得ることも少なくはありません。
路地の幅、地面の仕上げ、壁面の看板、店から通りにはみ出しているもの、窓のカタチ、など様々な要素が複雑にその雰囲気を構成します。
この雰囲気を作り出している要素も「環境と人との関係性」から考察することができます。
まちをより楽しむために~専門知識の一般化を目指して
環境と人との関係性は、私たちの生活の中で極めて身近な事象ですが、それになかなか気が付くことがありません。
無意識のうちに「なんとなく、落ち着く」とか「なぜか楽しい!」などといった感覚を持っていたり、本来意図していない使い方をされているものがあったり、とすこし目線を変えてまちを観察すると、今までと違った町の楽しみ方が可能になります。
これらの「なぜそうなるか?」を学問として研究している分野が環境心理学ですが、その考え方をわかりやすく一般のユーザーとまちの中で楽しむことができれば、そのまちの更なる魅力の発見につながるかもしれません。
結果的に地域資源の発見につながり、その地域の活性化のひとつの「切り口」になることを目指し、設計やデザインで応用するだけでなく、まち歩きなどの楽しみ方のひとつとして提案させていただきます。